名古屋高等裁判所 昭和58年(行コ)6号 判決 1984年11月28日
控訴人
マルホン工業株式会社
右代表者
岸勇夫
右訴訟代理人
早川登
被控訴人
小牧税務署長
竹中幸男
右指定代理人
荻野志貴雄
外二名
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実《省略》
理由
当裁判所も被控訴人のなした本件処分はいずれも適法であり、これを違法とする控訴人の請求は理由がないと考えるのであつて、その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。<中略>
控訴人の移出したパチンコ機がその主張のように発射装置を取り付ける前のパチンコ機であつても(本件で控訴人が製造したとして問題になっているパチンコ機の中にかかるもののあることは、<証拠>などからこれを窺うことができる。)、発注者において簡単な操作を施すだけで発射装置を右本体に取り付けうる状態で移出したものであり、発射装置の費用も他の部分に比すれば少額であつて、かかる全体の製造工程からみても経費の点からみても発射装置を取り付ける部分の占める割合が僅少なことから、業者間においてはしばしば発射装置なしのパチンコ機もパチンコ機として取引の対象になつていることが、本件弁論の全趣旨から認められる。かかる場合社会通念上も製造者がその取引先に発射装置のないパチンコ機を引渡すのを部分品の取引と見ることはできず、製造場から移出される完成品との課税の権衡上からも、これを物品税法一条の別表、番号八の5に掲げる「ぱちんこ機」に該当するというべきである。よつて控訴人の右主張は理由がない。
5 当審における控訴人の主張2について
原審および当審において控訴人代表者は、控訴人が従前徴税官吏の指導を受けながら物品税の納税義務を果たしてきたのに、本件に限り何の指導もなされなかつた旨供述しているけれども、そのような指導は法律上更正および賦課決定の要件になつているわけではない(国税通則法二四条、六五条)し、指導後に物品税を納入することが、事実たる慣習になつているとは、本件全証拠によつても認められない。
また控訴人は、被控訴人がいわゆる改造新台についての統一見解を示したのは昭和五三年五月二九日の説明会においてであると主張し、当審における控訴人代表者尋問の結果には右主張に副うところがあるが、<証拠>によると、昭和五三年五月二九日の日本遊技機工業組合員らに対する説明会は、国税局係官が盤面交換式パチンコ機等に対する物品税法上の扱いを広く一般に周知徹底させるためになされたものであり、いわゆる改造新台の普及にともない必ずしも適正な納税申告をしない業者があつたので、右取り扱いを改めて説明したものと認められる。更に被控訴人が本件処分前に控訴人に対し、右説明と違つた解釈にもとづいて誤つた指導をした事実の認められないことも前認定(引用の原判決理由)のとおりである。よつて控訴人の右主張も理由がない。
以上の次第で、控訴人の請求を棄却した原判決は正当で本件控訴は理由がないから、これを棄却し、控訴費用の負担について民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(竹田國雄 海老澤美廣 笹本淳子)